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ヌードか薄着のフランスパン



折りに触れ書いている通り、フランスパンこと「Baguette バゲット」には、2〜3年サイクルで変わる流行があります。
しばらく前は、たっぷりまぶした粉がハラハラ舞い落ちるTraditionだったりA l'ancienne(伝統&昔風)や、酵母を使ったもの、ここ数年はヘルシー志向からシリアル入りetc.

国内に居る人にはもう当然あってしかるべき姿ですが、パン屋さんで買うと手渡されるバゲットはこんな風にとっても薄着。
或いは、お店によっては(日曜のマルシェ近くの人気店のお昼直前の忙しい時間帯などにも)丸裸でそのままホイと手渡してくれるところもあります。



上のように、丸ごと一本或いは半本の真ん中に薄紙を巻いてくれるのが恐らく今も最も一般的で、「ここを掴んで持ち帰ってね」ということ。
粉たっぷりで厚化粧したバゲット流行中には、その裸のバゲットを持ち帰る道中でハラハラと落ち行く粉が服を白くして、向かいから来る人に「服に粉が付いていますよ!」なんて知らされたり知らせたりが道端で横行したもので、やがてそれが理由で不人気となり始めたため、お店によってはレジに専用の刷毛を用意しておいて、「粉落としますか?」なんてミニサーヴィスを追加したところもあったくらいです。

ちなみに、打ち粉用どころじゃなく粉をたっぷりふりかけて焼くのは、より香ばしさを楽しめるから。
素朴な昔風パンのような外観が得られることもあるのかもしれません。

そもそも「パリパリの皮」だけを好む人も多くて、以前あるミッションでしばらく通っていた会社の社長など、毎日決まって食事に添えられるバゲットの「皮」だけをパリパリポリポリかじり、ほじくり出した白いフワフワの中身をお皿の端っこに山と積んで行くのがまるで習慣というか、習性のごとし。

ちょっとスノッブなその社長サンを動物の生態系を探る、とばかりに観察しては、少々特殊なミッションで重役専用のランチルームに呼ばれて場違いな気分に緊張する同僚と顔を見合わせては、吹き出しそうになったものでした・・・



何かにつけ丁寧な日本だと、スッポリ入る紙袋に収めてくれる上、袋の口をセロテープで留めてくれたり、お店によっては保存用のバゲットサイズの細いビニール袋をクルクル巻いてワイヤーで留めたものを添えてくれたりもしますよね。
そんなことはまず望めません。
袋に入れてくれるお店も時々あれど、せいぜい2/3隠れる程度。
これは、パンを密閉してしまうと自身の湿気で外皮がふにゃふにゃになってしまいかねないからで、殊に熱々焼きたてのバゲットは必ず「裸」にしておくべし、これは鉄則。
そんなことから、ヌードか薄着が常なのでしょう。
(上は、ベレー帽ではなかったけれどハンチングに裸のバゲット数本を抱えた典型的風景。トゥール市内の街外れにて)


両端がたっぷり顔を出した薄着のバゲットというのはキケンなもので、殊に美味しいパン屋さんでお昼前や夕方ちょっと早めの焼きたて熱々のバゲットを受け取ったら最後、まず丸ごと一本家に行着いた試しがありません。
絶対に端っこをかじりたくなる。
それが私だけじゃないのを証明するのは、以前市内で開催されたパン祭りで見つけたこんなパン組合のポスター。



「皆さんのパン屋さん(パン職人)は、その職を愛しています。ひょっとしたら、そのために、彼のパンが丸ごとお家に辿り着くことがないのでしょう・・・」


次回は、残ったバゲットの最もポピュラーな使い道をご紹介します。


<本日の仏単語>
・バゲット baguette バゲットゥ
(「棒」という意味から。 複数形でbaguettes バゲットゥと言えば「お箸」)
・シリアル入りバゲット baguette aux céréales バゲットゥ・オ・セレアル
・7つの穀物入りバゲット baguette aux sept graines バゲットゥ・オ・セットゥ・グレーヌ
(7つだったり9つneuf ヌッフだったり、シリアル入りバゲットをこんな風に名付けるお店もある)
・酵母 levain ルヴァン
・酵母(を使った)バゲット baguette au levain バゲットゥ・オ・ルヴァン
・パン屋/パン職人 boulanger ブゥロンジェ
・ポスター affiche アフィッシュ


by mmetomato | 2007-09-06 18:33 | 食材


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