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TOMATOが「惚れた」トマト



サイト内のどこかに書きましたが、何故名前をTOMATOにしたか。

生まれも育ちもインテリ界、少なからずシモネッタ好きでシニカルで口の悪い、セルジュ・ゲンズブールにヴィネガーをまぶしてコミュニスト傾向を散らしたような大学講師(仏人)の授業中&その後が発端。
日本でのことです。

ポンと飛び出した、裏に意味の隠されたジョークには聞こえないジョークにクラスで一人だけ気付いてしまい、持ち前のとめどない想像力で彼の言わんとするところをピッチリ頭に鮮明な絵に仕立てた挙げ句、笑いをこらえて真っ赤になったのを、教壇の彼にめざとく見つけられましてね。
「ウハハ、一人だけトマトになってる奴がいる」
と冷やかされ、更に最悪なことに、周囲の誰も何が起こっているのかサッパリ分かっておらず、授業後に仲間達と集った際、
「さっきのトマトって何だったの、あなたに向かって言っていなかった?」
なんて話になり、迂闊にもというか妙にナイーヴに、私には面白かったそのシモネッタ・ジョークの内訳を白状した挙げ句、以後しばらく仲間達に折りに触れ「トマト!」と冷やかしに呼ばれることとなり・・・

かれこれそろそろ9年目が近づくグルメ・ガーデンに着手するに当たって、本名など記す気は更々無かったので、どうしようかと思いめぐらせる最中に折しも彼の話題がフランスから届き、「そういえば。トマトをアルファベットにしておこう」という、全く安易な発端です。
マダム を添えたのは、サイト作りの当初の目的だったHTMLを覚えたかった当時、まだパソコン通信からインターネットに世の中が切り替わって間もなく、ネットを良く知る周囲の人達から「女性は特に変な奴につきまとわれないように気をつけた方がいいよ」との声が多くて、マドモワゼルじゃないのが分かれば良かろう、というこれまた単純な発想から。

多分来年もサイトは続けていることと思うので、まさか10年近くそんなものを引きずることになろうとは、当時は知る由もありませんでした。

さして重要性の無かった冷やかしの「トマト」の大元氏は、問題の授業から1〜2年後にパリに戻ったにも関わらず未だに電話をかけてくると決まって「ト〜マ〜ト〜」で始まり、最後は「君のコンコンブル(=キュウリ。相棒のこと)によろしくね」。
当時の友人達ももはや忘れているのに、たまにパリへ出て会うとなると、カフェのテラスからも大声で「トマト!」と叫んでよこします。
ちょっとしつこい。(噂をすればなんとやら、書いている真っ最中にまた「パソコンが壊れた!」と電話が・・・)
見たところまずそうは見えないけれど、ゲンズブール同様、実はもの凄くシャイで繊細な神経の持ち主なんですけどね。
えらくひねくれたユーモアセンスの持ち主で、彼のジョークの意味は理解できない方が普通の人のフリが出来ること間違いなしという部類。

前置きが長くなりましたが、そんな折りに引き合いに出されるだけあって、トマトといえば普通思うのはやはり「赤」ですよね。
でも、私がこれまでで恐らく最も惚れ込んだトマトは緑色。



猛烈な暑さに見舞われることなく終わろうとしていた7月の末、そろそろ並び始めたかしらと、市内のマルシェでは私が知る限り(毎日全てのマルシェを巡っているわけではないので、あくまでも「私が知る限り」よ)唯一育てて売りに来る農家の出店へ顔を出したら、並んでいたのは大きな大きな「Coeur de boeuf:牛の心臓(品種名)」と「Piment:トウガラシ(品種名)」の2種類だけ。
緑のトマトは?と尋ねると、残念ながら今年は植えなかったのだそうです。

というわけで、写真は去年のものです。



ご覧の通り、皮は黄金色がかったイエローでも、一皮むけば中は鮮やかなグリーン。
名前は、毎年尋ねているにも関わらずまた忘れ、先週このトマトの仕入れもとに顔を出して尋ねたところ、「エヴァーグリーン」とのこと。 でも、何処の国生まれのトマトなのかまでは不明。



1粒300〜500g 前後になるやや大粒品種で、どこにも赤みはさしていないグリーン単色。
ジューシーでフルーティーで、色の割に青臭みが無くて、香りは繊細、甘味は心地良く楽しめる程度の控えめ。
近郊のシャトーで毎年開催されるトマト祭りで、チラシには「試食もできます」と書いてあった割にはなかなか見つからず、やっと巡り会った試食トレイにたった2品種だけスライスして並んでいたトマトのひとつが、この緑のトマトでした。

知らないととてももの珍しく見えるものでしょう。
私は、勿論まだまだ知らない品種の方が遥かに多いものの、トマト祭りを覗いてもさほど珍しく思うものに出会すことは殆どありませんでしたが、同じ地方に住んでいても、スーパーマーケットでしかお野菜を買わないような人にしてみれば、ピッチリと粒も色ツヤも揃って箱に収まったお行儀は良いけれど風味に欠けるトマトに比べ、小指の先程のミニトマトから1kg達成か?というような超肥満児迄、どれもが初めて見るもの、という人も多かったようです。

普段から私は、チャレンジ精神豊富な農家&マルシェに恵まれているとは思っていたけれど、ナス科のトマトには沢山の種類が、それこそ千どころじゃない品種があることも知らず、木で熟した「旬の完熟」の味も知らない人があまりに多いのを目の当たりにして以来、しみじみ恵まれた環境に居るんだわと思わずにはいられません。


<本日のバックミュージック>
Axel Bauerアクセル・バウアーのAlbum「La Désintégrale(ラ・デザンテグラル)」より、
“ A ma place ”(ア・マ・プラス)

「君が僕/私の立場だったらどうする?」と男と女のジレンマ(dilemmes)を軸に、「あるがままの自分を愛して欲しい」と、和訳するとコッテコテのラヴソング、女性歌手Zazieザジー(ザズィ)とのデュエットが話題になると共に、かなりヒットした1曲。
やたらにラジオで流れていた数年前、Axel Bauerが好きじゃないので殆ど無視していたのですが、Axel Bauerの従兄弟である友人とカフェで話し込んでいた最中にこれがかかった途端、「よく聴け:Ecoute-moi ça !」と黙られてしまい、初めて真面目に歌詞を聴いて以来のお気に入り。 彼のお気に入りの曲だったから聴けなのか、それとも意味があったのか?としばし悩まされたものでしたが・・・ 独りにしておくのは勿体ないとびっきりなイイ男であるその友人は、ついにこの秋結婚すると昨夜招待状を届けに来ました。
今年私の周囲は老若男女結婚ラッシュで、カレンダーとにらめっこして、相棒と共に喜々としてあちこち出かけています。

Dailymotion.comで見つけたVIDEO:
“A ma place”


by mmetomato | 2007-08-18 05:40 | 食材


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