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旬の食材:アーティーチョーク



草丈2メーターを超える、巨大なアザミの蕾を食用とするアーティーチョーク。
そろそろこの辺りでも咲いているので、今は旬の盛りにはもうちょっと遅めではあるかな。

日本ではあまり馴染みの無いお野菜なので、毎年一度は質問のメールが届く食材。
確かに、お花のつぼみとしては少々強面、しかもそのサイズは子供の頭くらいにもなるので、食べ方を知らないと、どこからどう攻めて良いやら何も思いつかないものなのかもしれません。




サイズの目安になるものを写していませんが、上のつぼみは直径15〜16cm。
大きなタイプです。
他に、主に南フランスやイタリアでよく使われる、小さなタイプも今、出回っています。

いずれも、食べる部分は主に、茎に繋がる「つぼみの根元」。
使い道は、好み次第でいくらでもあり得ますが、基本的に大小それぞれ下準備の法則があります。
ゲンコツ大の小さなタイプは、分厚く皮を剥くようにナイフを入れて、花びら状のがく部分の大半と固い先端、そして茎も切り落としてから、茹でたり蒸したり、ソース煮やグラタンにしたり、煮込み料理、或いはリゾット等に使ったり。
缶詰、瓶詰めになったものは、年間を通して売っていて、固い皮を剥くのが面倒なので、私はもっぱらそれらに頼り、生を買う時は大きなタイプばかり選んでいます。
丸ごと茹でる場合にはさほど気になりませんが、切り口がすぐに黒ずんでしまうので、生のうちにナイフを入れる小さなつぼみについては、切った側からレモン汁をかけるかレモンの切り口でこすって、変色を防いで作業します。
切り分ける場合も同様に。

直径10cmを超える大きなアーティーチョークの方は、丸ごと茹でて、丸ごとお皿にのせて、アントレとして味わうのが一般的。
基本さえ分かれば、準備は全く単純。

まず、購入時には、茎が太くて持ち重りがし、ガク(ウロコ状に重なる一枚ずつ)の根元がふっくらしたものを選びます。
大きくても、茎が細いものは成長不良で、食べるところが少ないから。
ちなみに、アーティーチョークは量り売りでなく1個いくら、という販売が主なので、立派なのを選ぶほどにお得なもの。 みみっちい計算かもしれないけれど、折角買うならより美味しく、より食べ応えがある方が嬉しいものでしょう。




国内では、3月終わりから4月にかけて、本来の旬をかなり先取りしたブルターニュ産のハウス栽培ものがスーパーマーケットに出回ります。
それらは多少若いうちに収穫されるので、繊維は殆ど口に当たりませんが、初夏から夏に出回るものは大分成長しているので、殊に茎が太ければ太いほど、その茎から花へ届く繊維が固い場合が多々あります。

まずはその茎もろとも、繊維を引っこ抜くところからスタート。
つぼみの首辺りに浅く、ナイフで一巡り切り込みを入れて、茎をへし折ります。 上が、そうして折って、つぼみに繋がる繊維を引き抜いた「茎」の切り口。
食べるのはつぼみですので、茎はこのままごみ箱へ(お庭で土を作る人なら、専用ボックスへ放り込むのでしょうけれど)。

肝心のつぼみは、ガクの間に汚れや虫が飛び込んでいることがあるので、流水が入り込むように水の勢いで多少ほぐしながら、丁寧に洗っておきます。
あとは、大きなお鍋にたっぷりのお湯を沸かして茹でるだけ。
お湯の温度が上がるように塩を加えても良いです。
茹で時間は、大きさにもよりますが30分〜45分前後、茹で加減は、茎の切り口に串を刺してみて、抵抗無くストンと刺されば、柔らかく茹で上がっている筈。

花の先端を下にして水切りし、手で触れて飛び上がらずに済むようあら熱を取って、或いは完全に冷ましてから、丸ごとお皿に乗せてやっつけにかかります。

80年代にフランスで活躍したコミックこと、一種のお笑い芸人のようなコリューシュColuche曰く、

Les artichauts, c'est un vrai plat du pauvre.
C'est le seul plat que quand t'as fini de manger,
t'en as plus dans ton assiette que quand t'as commencé !
アーティーチョークってのは貧乏人の食べ物なんだ。
食べ始めた時よりも、食べ終わった時の方が皿の中身が多い唯一の料理なんだから!


と言う通り・・・

丸ごとお皿に乗せたアーティーチョークのガクを一枚ずつ剥がしては、その付け根のふっくらした部分をヴィネグレット(ドレッシング)等好みのソースにチョンと浸し、歯でしごいて味わいます。
これを次々続けて行くと、そうでなくても大きなつぼみがドン!と乗っていたお皿に、ガクが山積みになって行きます。

やがて、殆どのガクがなくなったところで出て来る芯こそが、このお野菜の一番美味しい部分。
キク科のお花なので、タンポポの花、或いはキクやマーガレットの花の中心部分のような、雄しべ&雌しべが真ん中に集って隠れています。 これを丁寧に剥がして、食べる所が殆ど無い薄いガクも取り除き、柔らかい芯は、ナイフとフォークで、ソースを付けて味わいます。
切り口に近い茎部分は、よく育ったつぼみの場合は固いことがあるので、適当に切りはずして。

我が家でアーティーチョークをアントレにする度に、コリューシュの言葉と共に、二度に一度は思い出すのが、アメリカ人の友人の話。
子供の頃、季節になると一家でアーティーチョークを食べたものだそうで、皆でせっせとガクを前歯でしごきながら味わった末、コロンとお皿に残った芯の部分は、両親が集めてよけて、アントレはそれにて終了。
ある日、ママに「ねえ、その芯はどうするの?」と尋ねたところ、「これは食べないの」との回答を得て、以後大人になるまでずっと、彼は「アーティーチョークっていうのは、あのウロコ状のガクしか食べないものなのだ」と思っていたのだそう。
大人になって、実はその芯こそが主たる食用部分なのだと知った時、「両親は子供達にガクを片付けさせて、一番良い所だけ二人占めしていたのか!」と地団駄したそうで・・・

どう形容したものか、よく似た風味の菊芋が「イェルサレム・アーティーチョーク」の別名を持つ通り、このお野菜ならではの独特の風味があるので、食べつけない人の中には拒否反応を示す人も居るかもしれません。
独特な風味あってこそ、好まれるお野菜なんですけどね。
また、仏人の食生活に不足しがちと言われるマグネシウムを多く含むお野菜、というのも、人気に一役買っているのかも。


<本日の仏単語>
・アーティーチョーク artichaut アルティショ
・ヴィネグレット vinaigrette


<オマケ>
上出コリューシュのスケッチ:
Mon Papa était balaise
(1分50秒目辺りにアーティーチョークのフレーズあり/Youtube.com)

Autostoppeur:ヒッチハイク(お気に入りのひとつ/Dailymotion.com)
by mmetomato | 2007-07-07 15:55 | 食材


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