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懲りたので、もう追いかけません


「虹は、追いかけると逃げます」。
一昨年だったか去年だったか、かつての雑記に「虹を追いかけた」ことを書いたことがあるので、以前から覗きに来て下さっている方は既にご存知の通り。

裏側から見たらどうなるのか? と追いかけて追いかけて、やっと追い越したと思ったら、またさっきと同じ位向こうに飛び退いていましたから。




週末に、隣県のソミュールSaumur迄、一時的に入院中の人のお見舞いに出かけた帰り道、この街では二つに別れるロワール川にかかる橋を渡っていたら、丸一日続いた強風の嵐で、陽が射したり横殴りの雨(雨粒が見事に真横に飛んで行く)に入れ替わり立ち代わり見舞われた上、かなり肌寒い中を出かけたご褒美に出現した虹がこちら。

あまり濃い虹ではなかったので、パソコン画面の明るさ次第では、見えにくいかもしれません。

「裏側から見たらどうなるか」は、よく考えるとかなり間抜けな発想で、多分、裏側なんて無かったのでしょうね。
元々太陽の光のせいで見えるものなので、その裏へ回ったら、つまり太陽に向き合う側に立ったとしたら、きっと見えないものなのでしょう。

追いかけ、追い越すんだ! と夢中になって車を飛ばしていた時には、考えもしなかったけれど、さすがにもう懲りたので、大慌てでこの小さなソミュールの町を突っ切るようなことは、今回はしませんでした・・・

そんなソミュールといえば、見逃せないのが、その町並みとお城の美しさ。




二分したロワール川にかかる南側の橋からの眺めです。
荒れ模様の黒い雲を背景にすると、シャトーの白い石壁が引き立って、いつもとはまた違った雰囲気に。

星の数程あるロワール渓谷のお城の中で、私が最も気に入っているのがこのソミュール城。
絢爛豪華なデコレーションがあしらわれたり、おびただしい数の煙突が付き立つフランス第二の規模を誇るシャンボール城等も見応えがあるけれど、高台にすっくりと、そしてスッキリとしたシルエットが凛とした気配を生むこのお城が、最も心に響く気がします。

更には、シャトーを引き立てるのが、高台から続くその町並み。

トゥールや、ソミュールと同じ県の県庁所在地であるアンジェAngersがカトリックの街だったのとは異なり、この街は、かつてはプロテスタントの街だったことから、割と質素なカトリックの習慣とは違って立派な家が多く、お城がその姿を川面に映し出すロワール川沿いには、同じ濃い灰色のスレート石の屋根に、砂質の真っ白な石造りの、色調の揃った家並みが続いています。




そうした色の統一が、お城とひと続きの風景を作り出していて、陽射しが強くなる初夏から夏の少々眩しく感じる光のもとなどでは特に、気取りも何もかなぐり捨てても「心が洗われる」なんて表現を引っ張り出したくなるくらいに、綺麗なパノラマが楽しめます。
ロマンティック、というよりも、気分をピシッと、背筋を伸ばさせるような感じがするのですが、その辺りは見る人次第かな。

私は、もしもこのお城が人間の姿だったとしたら、「こんな人になりたい」。
そんな気分をそそる姿。
他のお城に比べて遥かにまとまりがあって(例えば、ここからさほど遠く無い所にある「眠れる森の美女」のインスピレーションをペローに与えたとされるユッセ城なんて、寄せ集め建築で、そちらはそちらで独特の雰囲気はあれど、よく見ると変な城ですから)、ゴージャスに飾り立てることなく、その立ち姿だけで存在感があって、でもちっとも人を圧する感じがなくて。

白と黒、どちらも好きな色ではあるけれど、その2色がここほど清楚に眼に映る町並みも、珍しいのではないかと思います。




そのシャトー(上は、2分したロワール川の中州から撮影)、実は、お城の石と同じような砂質の岩の上に建てられていて、今から5〜6年前になるかな、岩の一部が崩れて、シャトーの建物自体には幸い被害は無かったけれど、それを囲む石壁が崩れ落ち、お城の足下の家をいくつか破壊した災難(シャトーにも、足下に住んでいた人にも)がありました。
街の人から聞いた話では、石壁が崩れて全滅した家は、市だか県だかが所有する「若者の家」、若者向けの低家賃住宅のようなもので、折しも崩れたその時、普段ならそろそろ眠っている筈の住民は、夜中にローラースケートをしに出かけていて、難を逃れたのだそう。

歴史的建造物なので、壊れたからすぐさま修復しましょう、なんて簡単には行かず、以後数年、ビニールがかけられ今ひとつ見栄えの悪い姿をさらしていましたが、とうとう市が資金調達と修復企画の問題解決し、しばらく前から工事をしていて、今見られるシャトー手前の真っ白い石壁は、修復されたてのピカピカの状態。

以前から見慣れる眼には、なんだかしっくり来ないのだけれど、あと2〜3年もすれば、適当な塩梅に風化して、シャトーとの色調が揃うのではないかと思います。
お城の建物も、上の写真右側は、つい先日まで半年強かな、足場を組んで、壁を磨いていたため、大分白さを取り戻しました。
こちら側からの眺めが一番美しく、カメラを構える観光客が多いので(こちら側に、キャンプ場とユースホステルがある)、観光シーズンが終わったら掃除に取りかかるのかも? と、半ば危惧しつつも、半ば期待しているところです。

夜の姿もまた違った趣があるので、後々、また掲載することと思います。
上に出て来た「眠れる森の美女」のモデルとなったお城もまたいずれ。


<本日の仏単語>
・お城/シャトー château(単数形)、châteaux(複数形)
・ソミュール Saumur
・アンジェ Angers
(共にMaine-et-Loire メーヌ・エ・ロワール県)
・アンジュー地方 Anjou オンジュゥ =ソミュールからアンジェにかけての一帯の旧区分。 トゥールToursを中心とするトゥーレーヌTouraine地方から見て西隣。 共にワインの産地で、殊にアンジュー地方には、有名な白ワインあり。
また、ソミュールには、シャンパーニュ地方でないのでシャンパーニュとは呼べないけれど、Saumur Brutソミュール・ブリュットゥと呼ばれるスパークリングワイン(白主流、ロゼ及び赤のスパークリングも)が知られています。
その他、ソミュールと言えば、国内唯一の国立(軍隊の)騎馬学校があって、馬の町としても国内外で有名。 近頃Cadre Noir キャドゥル・ノワールと呼ばれるエリート中のエリートによる騎馬ショーの宣伝を熱心かつ手広く行うようになったので、県外でも広告やパンフレットを見かける機会が増えました。
色々名物があるので、その辺りも、追々また触れることにします。 過去に書いたことがあるものも多いけど。


<本日のバックミュージック>
Zazie ザジーのAlbum「Totem(トーテム)

Zazieザズィ、特別好きなわけじゃない なんて言いながらも、いつしか好きな曲が増え、なにかと手元に集まっています。
このアルバムでは、目下1&2曲目「Des Rails:デ・ライユ(直訳:レール)」と「Je suis un homme:ジュ・スィ・アンノム(直訳:私は男/人間)」がお気に入り。 ほぼ毎日1度ずつは聴いているかも。
数日前、「Je suis un homme」のメロディーが頭を巡りに巡り、どうあがいても消えてくれないので、ええい、いっそ歌っちゃえば吹っ飛ぶわよ! と、家路を急ぎながら冒頭の「ワタシはクロマニヨン人」なる歌詞がポロッと口から出てしまったところ・・・ よりによってそういう時に限って間近(さほど人の多くない住宅地の歩道よ)で耳聡く聞き付ける人が居るもので。 「ふ〜ん、そうは見えないけどね?」なんて、見ず知らずの人に冷やかされて赤っ恥をかいた上、メロディーはちっとも去ってくれず、大急ぎで家に飛んで帰って真っ先にこの曲を聴いて。
なのに耳に益々こびりつき、翌日のシャワーの下でもフハハァンと歌っていました(冒頭のちょっとは覚えているけれど、歌詞丸々までは空では歌えず)。

Dailymotion.comで見つけたVIDEO:
“Des rails”
“Je suis un homme”
  ↑ ユーモアたっぷりVidéo。仏語が分かる人にはオススメよ、歌詞をちゃんと聴いてね。
“Na” (en live vidéo (au Rex ?) part 1)
“Na” (en live vidéo (au Rex ?) part 2)
“Na” (en Live : promotion de l'album Totem)


by mmetomato | 2007-06-01 02:16 | 近郊


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