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マグレブ化するフランス

お昼休みのカフェテリア、厨房が放つフリッツ(フレンチフライ/フライドポテト)やお肉、食後のコーヒーの香りに混じってどこからともなく漂って来るは、爽やかなミントの香り。
目覚ましや口臭予防にガムやフリスク等を口に放り込む人も居るけれど、私の鼻がキャッチしたミントは、どう嗅いでみても「ミントティー」。
ここで言うミントティーは、ミントの葉っぱを煎じたハーブティーではなくて、マブレブ系(北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジア)の人達が、多くの日本人にとっての緑茶のように日常的に親しんでいる、中国緑茶ガンパウダーにフレッシュミントの葉と角砂糖をたっぷり加えていれたお茶です。

厨房と隣り合わせのカフェテリアの一角には、給茶器ならぬ、日本でもドライブイン等でよく見かける、カップがポトンと落ちて来て暖かい飲み物が得られる自動販売機が用意されています。 メニューに多少ヴァリエーションはあれど、大きな会社や会社のカフェテリア、大学等ではお馴染みのこうしたコーヒーマシンといえば、濃淡コーヒー、カップッチーノ、ホットココア、牛乳、紅茶がおおよそのチョイス。
たまに、それらにインスタントの野菜スープが加わるくらいです。



上が、そんなコーヒーマシン(伸びて来た手は、私のじゃありません)。 どこも殆どこのスタイル。
一番上の黄色い帯の「SUCRE(スュクル)」で、プラスとマイナスボタンでお砂糖の量を調整し、その下にズラッと並ぶ番号ボタンで好みの飲み物を選んで購入する自動販売機。
価格は、場所によって多少幅がありますが、0.40〜0.60euros程度。

色々な組織集う大きな建物地階にあるカフェテリアには、建物内部からも外部からも昼食に人が集うので、人種多様なフランス人達、北アフリカ系もチラホラ見られて、鼻先に漂ってくるミントティーの香りに、てっきり私はそういう人達が保温ポットにお茶を用意して自宅から持って来て食後に飲んでいるのかと思ったら。



一昔前には考えられなかった(&私が知る限り見た事のなかった)ミントティーが、メニューの下の方に加わっていました。

こういう機械は、「Fontaine d'eau(フォンテーヌ・ド:直訳すると水の泉。給水機のこと)」や自動販売機同様、専門の会社が設置・管理しているもので、れっきとした商品販売なので、おのずと商売戦略も関わって来て、場所によって売れる品が異なるでしょうから商品ラインナップもそれに基づいて異なる筈。
ざっと見渡すところ、とりわけアラブ系(ないしマグレブ系)が多い風でもないのでなおのこと、私にはとても意外に思えたチョイスで、ある意味ちょっとしたショックでした。

手書きの白いラベルが、そのミントティーです。
「Thé vert menthe テ・ヴェール・モントゥ」&
「Thé vert menthe (fort)」、
共に「(緑茶の)ミントティー」。 FORT フォールは濃いめ。 何が濃いのか明記されていませんが、ミントの香り強め、或いは緑茶濃いめのいずれかでしょう。

クスクスやタジーヌといった北アフリカ料理レストランも多く、今やフランス人にとってもクスクスは、日本人にとってのカレーライスのごとき国民食。 それらのお料理を楽しめるレストランは多く、加えて、ケバブと呼ばれるフランス版ファストフード(多少違いあるものの近隣国でもよく見かける。日本ではドネルケバブと呼ばれるとか?)的なサンドイッチ屋さんでも、食後にサービスしてくれるお茶がミントティー。
フレッシュミントの芳香豊かで、ベタベタしそうに甘いお茶。

大雑把に「アラブ(アラブ系)」と呼ばれるマグレブの人達は、フランスの移民の中でも最も多いのではないかと思うくらいそこら中に居て、二世三世(彼等はフランス人、或いは重国籍)もわんさか。
おのずと、昔ながらのフランス人の間でも、彼等のカルチャー(広い意味でね)はかなり知られていて、ミントティーも恐らく知らない人の方が少ないこととは思うのですが、コーヒーの自動販売機に加わるほどにマグレブの日常がこの国に浸透していたのか! と改めて思い知らされました。

ミントティーが、誰かの保温ポットじゃなくてこのマシンの仕業と知って改めて眺めてみると、「紅茶」がメニューになかったのがまた意外。
マグレブ系移民及びその二世、三世で家庭内であちらの伝統を受け継ぐフランス人は増える一方なので、もう何年かしたら、ミントティーも定番メニューになっていかねないかも・・・


オマケに、「コーヒーマシン」と言っても、フランス人(にも色々居るのでひとまとめな言い方は正しくない。ここでは、少なくとも3〜4世代はこの国に根付いている人達というニュアンス)に親しみ深いココアはスタンダード。
紅茶も、ある所にはあるのですが、上のマシンにはありません。
最も頻繁に見かけるチョイス(上のマシンなど比較的ベーシック)を挙げると:
 Café expresso カフェ・エクスプレッソ(エスプレッソ)
 Café long カフェ・ロング(水増ししたコーヒー、アメリカンよりは濃いめだと思います)
 Café crèle カフェ・クレーム(クリーム入りコーヒー)
 Café au lait カフェ・オ・レ
 Cappuccino カップッチーノ
 Lait レ(牛乳)、 Chocolat ショコラ(ホットココア)
 Thé テ(紅茶)
その他時々見かけるもの:
 Soupe スゥプ(スープ)
 Moccaccino モカッチーノ
 Choc-o-lait ショッコレ(ホットココアの一種、恐らく銘柄名)
 Café vanille カフェ・ヴァニーユ(ヴァニラ風味のカフェ、ここ数年の流行)
といったところ。 こういう商品セッティングもマーケティングが関わる筈で、移民が多いとか年齢層(各種学校・大学・会社の別等)などで内容が違うものでしょうから、他にも品目チョイスはあろうかと思います。


by mmetomato | 2008-05-01 06:14


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