人気ブログランキング | 話題のタグを見る
マリアージュ:その1



トゥールに越して来た第一日目に近所のカフェで出会い、以後相棒にも私にも最も大切な人達の一人となった友人がついに結婚すると2ヶ月程前に知らされ、招待状を届けに来たのがおよそ一ヶ月前のこと。
ついにその当日、丸一日がかりの、セレモニー&パーティーに参加してきました。

トゥール市役所での結婚セレモニーに参列したのは久しぶりなので、日本とは違う“マリアージュ”をちょっとだけご紹介。




上は、セレモニー開始待機中の新郎新婦の後ろ姿。 こうして寄り添っているかと思えば、突如鉄砲玉の如くそれぞれに友人達の元へ走り、追い返されて再び寄り添う、と繰り返していたのは、二人それぞれに落ち着かず、適当に緊張をほぐそうとしていたのでしょう。
微笑ましいひととき。 だけどお陰でこちらまで緊張したりして。

ご覧の通り、ドレスでもタキシードでもなく、まるきり平服です。
スーツにネクタイじゃ働けない職業で、普段目一杯ラフな、まるでスポーツウェア紛いな格好しかしない新郎なんて、色こそ黒でジャケットと合わせてはいるけれど下はジーンズ。
胸が覗くまでボタンを外したYシャツで市役所に到着した彼のネクタイは弟の手からぶら下がり、さて上階に移動という時になってようやく「こんなものにゃ僕は普段縁はない。結び方なんざ知らないよ」と胸を張って誰か結びに来てくれと呼びかけた挙げ句実の姉に結んでもらって。
私も当日朝、「彼、スーツ持ってるのかしら?」と目一杯疑っていたので、これでも予想したよりちゃんとした格好だと思ったくらいです。

新婦はというと、ご覧の通りドレスとはほど遠いツーピース、彼女も普段はもっぱらTシャツにジーンズ。
人にもよりますが、こういう普通な格好で式に臨む人も沢山居ます。
かくいう私も、この日の方が自身のセレモニーより良い格好していたんじゃないかと言えそうですし(それでも、そのまま仕事へ出かけられるような程度。加えて彼等の式の方がよっぽど緊張したかも。当日迄、彼が結婚する日は本当に来るんだろうか?なんて、今ひとつ信じられない気分で余計な心配をしていましたから)。

やたらゴージャスな傾向の強い日本の結婚式場の「参列者」より地味でしょう。
でも、こういうカップルも多いので、全く不思議でも場違いでもない自由な点は、仰々しい格好ばかりのセレモニーが大嫌いな私には、嬉しいところ。

勿論、この国でも飽きれる程ゴージャスな式はいくらでもあるけれど。
極端なのはもう私には、仮装大会感覚になってしまって、真面目な気分が台無しになりそうで・・・




こちら(上)は、トゥール市役所の結婚式会場である「Salle de mariage:サール・ドゥ・マリアージュ」。
今年の春に開催された大統領選挙の際には、大きな選挙時の常である大スクリーンが設置され、TV中継会場兼20時の開票結果のTVの特別番組放映会場となる、以前雑記に写真を掲載したのと同じホールです。

実は、この後に続いたカクテルパーティーで、私達の友人である花婿のママとの雑談中知ったのは、花婿の両親も、ウン十年前に全く同じこのホールで式を挙げたこと。
このホールに居る間、私はそうしたママの心知らずでしたが、今は亡き、軍人上がりの結構なマッチョで、だけど暖かい心の持ち主のパパ(生前私も色々お世話になったので)を想いながら参列したのは私も一緒。
勿論、花婿の弟と姉夫妻、そして幾人か集った幼なじみも同じだった筈。


このセレモニーは、フランス人の結婚に際して必ず開催されるもので、どんなに嫌だとゴネようとも、法的に認められる結婚をするなら義務であるもの。
婚姻届にサインして(判子を押して)届けるだけで婚姻成立する日本との最たる違いで、婚姻届に代わるもの、といったところかしら。
書類提出や、どこそこの誰さんと誰さんが何月何日に結婚を予定しています、という公示が義務なので、それら手続きを終えてから挑むセレモニーなので、諸手続きを含めると、最低でも1ヶ月弱位は所要時間を見積もらないと迎えられない日。
そういう意味では、日本での結婚手続きはもの凄くあっさりしたものです。

参列者を背後に従えてのセレモニー所要時間は、ほんの15分程度。
婚姻に関する法律の読み上げとそれらを守る誓約の宣言(新郎新婦側)、新婦、新郎それぞれの、相手との婚姻の意志の確認と誓約宣言に続いて、婚姻に関する契約(財産の分割の有無やら何やら契約書の内容に関して事前に提出してある意志の読み上げ)、婚姻誓約書(契約書のようなもの)に新郎新婦の署名、更に二人の立会人の署名を書き加えて、市長による成婚宣言。
婚姻成立宣言と共に、婚姻証明書と家族手帳が手渡されます。
これで一番肝心な部分を終えて、晴れて新郎新婦が法的に夫妻として認められます。
この後指輪の交換(義務ではないので端折ってもOK)をして、大抵は皆の前で二人でキスを交わして、と、この辺は映画等でもお馴染みのシーンを経てセレモニーは終了。




小さな市町村なら、市長さん自らがセレモニーの指揮をとりますが、地方都市とはいえトゥールも一応ほどほど大きな街なので、殆どの場合市長代理(複数居る)が担当します。
現トゥール市長はあまり感じの良い人じゃないので、市長代理の方が絶対有り難い とは私の個人的意見。
今回の式に出て来た市長代理の方は、写真の通り(フランス国旗カラー、青白赤Bleu, blanc, rougeのたすき掛けした方)女性で、にこやかで明るく、とっても感じの良い方でした。

セレモニー直前、招待状には「遅刻して来る人が居ないように」と15分早い時間を記載したという新婦、ご当人は本来の開始時間丁度に到着し、それに一歩遅れて家族を従えて「いやぁ、駐車スペースが見つからなくてさ。ギリギリ間に合ったのに待たされるのかよ」とやって来た新郎。
照れ隠しに口を尖らせてみせるものの、根が真面目なので実は緊張していて、待ち時間は1秒でも短くしたくてギリギリにやって来たのにとんだ顛末。
「こっちはいいから、まず新婦を探しなさいよ」と私達。

彼等の前に予定されていた別なカップルのセレモニーが遅れていて、前のグループが入り口ホールを占拠していたから。 折しもアフリカ系カップルで、招待客もアフリカ系が99%。 なんだかいつもの風景とはちょっと違った独特の衣装と顔ぶれに押されて、端っこに後ずさる一同・・・
類は友を呼ぶとは正に!と相棒に冷やかされるくらい、新郎は「なんだか仰々しいな」とおどけて顔をしかめ、新婦はもうちょっと素直に「待機時間が一番緊張するみたい」と可愛らしいところを覗かせつつ、私達のグループは主役の二人と共に入り口ホールでおよそ15分、1階(=上階)の階段踊り場で更に10分待たされた挙げ句のセレモニー開始でした。




上は、市役所の入り口ホール(普段は閉まっている扉側で、特別な機会だけに開かれる)で賑やかに待機中のアフリカ系グループの一部。

こちら側のグループになんとなく身を寄せていたアフリカ系の兄弟と思しき二人の男性を、「何故あっちのグループに近寄らないんだろう?」なんて疑問に思っていた私。
セレモニー会場に一緒に付いて来て初めて、彼等は我らがヒロインである新婦のお友達の夫とその弟と知らされたのでした・・・
顔が近いからてっきりあっちかと思った なんて、口が裂けてもその場じゃ白状しませんでしたが。

このグループと入れ違いに入るために待機していたところで、セレモニーを終えた彼等、それはそれは凄まじい声で式の後に吠えていました。
吠えるというか、どう形容したものなのやら、大声で「オ〜〜〜」と叫びながら口を小刻みに抑えて「オヨオヨオヨ!」と叫び続けるといった感じ。
インディアンの叫び(ステレオタイプ?)のようなもの、と言えば分かるかしら。
突如異国に放り込まれた気分だったこの風習、周囲の説明によると、元はアラブ人がやっていたものが西や南アフリカに広がったものなのだそうです。

面白い文化に遭遇したものでした。

ついでにもう一つ、そんなアフリカ系グループが残して行った足跡。




あちらの花嫁&花婿の歩く道に散らされた、バラの花びら。
エディー・マーフィー扮するどこだかの王子様を主人公にしたアメリカのコメディ映画で見た事があったけれど、実際にやっているのを市役所で目にしたのは初めて。

次回は、この後の運びを。


by mmetomato | 2007-10-01 01:49 | トゥール Tours


<< マリアージュ:その2 フレンチエスニック・スパイス >>